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あの大地震の日、きっと彼らはラジオを聴いていただろう。

投稿者: mameblack 投稿日:


想像ラジオ

どこかで聞いたことのあるタイトルだと思った。

最近、ボクは聞いたことのある作家さんの作品を読むのにハマっている。

作者は、いとうせいこうさん。

何をしているのか詳しくは知らないけれど、テレビ番組で見たことがある。

そして最近ボクがYouTubeで動画を見ている”駆け抜けて軽トラ”というお笑いコンビ

小野島徹さんが「顔いとうせいこうです」(雰囲気が似ている)と言っていて

そんなこんなで興味をひかれたので、中身も気にせずに手に取った。

杉の木にぶら下がった38歳、一般男性が始めた想像ラジオ。

想像ラジオなのだから、彼が杉の木にぶら下がってるのだって、きっと想像の世界の話だ。

そう思いながら読み進めつつも、なんだか違和感を感じ始める第一章。

続く第二章では東日本大震災にボランティアで訪れた、あるグループの会話。

震災の話、原爆の話、生死の話。

亡くなった人が無言であの世に行ったと思うなよ、

叫び声が町中に響き渡ったはずだし、

悔しくてどうしようもなくて自分を呪うみたいに文句を垂れ続けたろうし、

熱くて泣いて怒って息を引き取るまで喉の奥から呻き声あげたんだぞって。

ボクたちはもう死んでいる人の声を聴くことはできないけれど

広島出身のボクは原爆の恐ろしさを子どもの頃から聞かされてきた。

一瞬で焼け野原になった広島で、大やけどを負った人は即死だったか?

近くの家の窓ガラスが割れて、その破片がとてつもない勢いで刺さった人は?

全身にやけどを負いながら、水を求めて、太田川に飛び込んだ人は?

運良く助かったけれど、その惨状を目にした人は?

小説や漫画では、誰かの声しか文字にはならないけれど

きっと声にならない声、声かどうかも分からない声、きっと溢れていただろう。

もちろん東日本大震災の時も。

阪神淡路大震災の時も。

大勢が亡くなったときだけが特別じゃないだろう。

亡くなる寸前に、誰も何も聞けなかっただけで、きっと黙って死なないだろう。

ボクだって、いつか死ぬ時が来れば「畜生」くらいは言うだろう。

こんはなずじゃなかった、まだやりたいことがあった、と続けるかもしれない。

声に出すか、それとも頭の中で呟くだけかは分からないけれど。

「想像ラジオ」は死者にしか聞こえないラジオ。

独りぼっちの死者を、独りぼっちにしないためのラジオ。

死ぬ前に少しだけ、誰か知らない人と時間を共有するためのラジオ。

ボクもいつか死ぬ時が来たら、そんなラジオを聴けるだろうか。

それともDJアークと同じように、ラジオをやるだろうか。

東日本大震災から時間が経った今も、時間が経ったけれど

だからこそ読んで欲しい一冊だと思う。

生者と死者は持ちつ持たれつなんだよ。

一緒に未来を作る。

死者と生者が抱きしめ合っていくんだ。

今日も死者のことを考えながら、悲しんで涙を流しながらも

それでも僕らは生きていく。


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